関孝和は偉大である．
ほとんど何もない土壌から，次々花を咲かせ実を結ばせて，立派な成果を
挙げていった．まさにアルキメデスとも比肩される偉業である．天才と呼ぶ
にふさわしい人物である．
関孝和が亡くなって 300年. 2008年には，その遺徳を偲び「関孝和三百年
祭記念事業」を実施した（→［記念事業］）．関孝和の業績は伝えられているが
（→ ［関孝和全集］），どのような人であったのか，ということは，全くわから
ない．江戸時代には，彼のことを伝える配慮が全くなかったのか．
さて，関孝和の業績を調べていくと，その才能のひらめきには，圧倒され
る思いである．そしてまた，それをとことん実行し，まとめ上げていく能力
にも，目を睦る思いがする．今日のわれわれも，大いに学ぶところが多い．
本書では，関孝和のまとめあげた数学のいくつかを調べ，また，江戸時代の
数学発展のもとになった天元術傍書法の端緒も見ることとした．読者が，そ
のような関孝和の数学のよすがを垣間見る便りになれば幸いである．